2002世界選手権 プエルトリコ大会
- 宇佐美選手レポート(プレーヤー編)-

個人戦を中心に各選手の印象についてレポートしてみたいと思います。

シングルス
男子:
ドローはカナダ、アメリカ、メキシコ、ベネズエラ、日本の順にシードが決められていました。前回の団体戦の結果を重視しているように感じますが詳細については不明です。前回優勝者のALVARD(メキシコ)選手は4シードに入っていませんでした。
8シードで順当に勝たなかったのはベネズエラのNo.2マルセロ選手(韓国のリ選手にタイブレークで敗れる、このリ選手に勝った清水選手が8入り)のみです。私もあと1点で仲間に入れたのですが、無念であります。トホホ。
アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国は磐石です。今回はたまたまアメリカの2人が決勝で対戦しましたが、2回目があったとしたら、結果は違うものになりそうです。
私は日本チームの応援などで全ての試合を見られませんでした。ベスト4の各選手について、触れてみたいと思います(かなりマニアックですのでご了承ください)。



優勝:JACK HUCZEK選手(USA)

19歳、若いです。14歳くらいの時にボストンで見かけた事があります。当時も私よりうまい印象がありましたが、プレースタイルは全く変わっていません。全くのオーソドックススタイルで船谷選手曰く「つまらんな」。驚くような事はほとんどしません。しかし、昨年の全米選手権を制し、2001年プロツアーでも5位にランキングされています。ボールもトップランカーの中では遅いです。セットアップが以前とは比べものにならないくらい早くなっていました。フォームも昔の面影を残しつつもシンプルに変わってきています。トッププロのジョン・エリス氏の父デイブ・エリス氏をコーチにしているようで、その影響かと思われます。

外人選手にしては珍しく、審判に対するマナーも紳士的です。以前はくってかかってましたが、変わったのでしょうか?試合前のアップでステップの練習をしていたのも印象的でした。多分、SAQトレーニングとかをとり入れているのだと思います。

準優勝 JASON THOERNER選手(USA)

見かけ、年齢不詳です。多分、若いと思うのですが…。今年になって急に名前が出てきた選手です(私が知る範囲)。多分キャリアは浅いんだと思います。フォームははっきり言って見た目汚いです。初心者と間違えそうなくらいです。しかし、シンプルで理にカナっているような気もします。背が高くひょろっとした体型です。そんなにパワーで押すようなタイプではありません。
決勝は序盤5-1とリードしていましたが、JACK選手のフォロースルーが口にぶつかり、口内を切ってしまったようで、同時に集中力も切れてしまったようでした。彼のプレーは「キル、ロールアウト狙い」です。調子に乗ると恐ろしく決まります。動きがちょっと奇怪なので、上手そうに見えないのですが、読みやラケットタッチに関しては天才だと思います。あんなに構えないで、狙って打っているようにも見えないのに、なぜかボールは決まっています。おそらく、ボールを眼で見てから体の反応が早く、微調整ができるんだと思います。これはセンス以外のなにものでもありません(私の場合はイメージと違うボールが来た場合は瞬時に安全なショットに切り替えますが、彼の場合は微調整をして決めに行く事ができます。しかもキル狙いで。まるでキルの打ち方を体が覚えている、極端に言うと肘から先の腕が覚えているという感じです)。実際のところのキャリアも浅いとしたら、今後プロツアーで楽しみな選手だと思います。

3位:BRIAN ISTANCE選手(カナダ)

彼は超紳士でナイスガイです(しかも新米パパ)。私が学生時代シカゴのプロトップに行った時に一緒に泊まった事も覚えていて、「very nice to see you again!」と私とはとても仲良くしてくれました。ハローという日本では馴染みのないラケットを使っています。
新しいラケットメーカーです。大会選手No.1のパワープレーヤーだと思います。とにかくボールは速く、ボールをつぶしたスプラットは全然出てきません。私個人的にはとても応援していた選手だったのですが、準決勝タイブレークの末、JASON選手に敗れてしまいました。清水選手も彼のドライブサーブにかなりエースをとられていましたが、サーブのみではなく、ラリー中のボールも非常に力強いです。上半身の力があるのだと思います。メンタル的に少しムラがあるようで好不調の波が大きかったです。

3位:KANE WASELENCHUK選手(カナダ)

彼は15歳の頃からカナダのナショナルチームで活躍している選手で、まだ19歳か20歳くらいだと思います。とても明るいおちゃめな感じでいつもニコニコしています。総合的なセンスでは大会参加選手でNo.1です。動き、ショットセレクション、ラケットタッチ、読み、パワー全てが優れています。特にボールはすさまじく速いです。私と対戦した時はかなり手を抜いていましたが、それでも全然反応できませんでした。
準決勝でJACK選手に負けましたが、今年彼に負けたのは初めてらしいです。私が見た2ndゲームに関してはずっと優勢に試合を進めていて審判の不可解な判定に集中力がほんの少し途切れた所に一気に点を取られたという感じで少し気の毒なような気がしました。プロランキングも4位。今年は1位になりそうな予感もします。私もトッププロと対戦する彼のプレーを見てみたいものです。


女子

優勝:CHERYL GUDINAS選手(USA)

もう10年近くトッププロで活躍する選手です。ごっつい体と顔つきなのにフォームはこじんまり、ショットも手先で相手の力を利用しているような印象です。動きが鋭いわけでもなく、ショットセレクションと読みで勝っているように感じました。坂本選手曰く「わがまま」なんだそうです。女王様の雰囲気は確かにかもし出していました。

 

準優勝:JENNIFER SAUNDERS選手(カナダ)

まだ若いように見えますが、いつも怒っているような顔つきで少し怖いです。フォームやプレーは前回優勝のクリスティ選手に似ています。カナダは一貫したコーチングが行われているんだと思いました。坂本選手は彼女相手に10、14と非常に惜しい試合をしました。私は残念ながら観戦できませんでしたが、船谷選手曰く「あれはホンマ惜しかったわ」だそうです。
彼女は女性プレーヤーには珍しく、速い展開を好みます。ほとんどの選手は彼女の展開についていく事ができず、主導権を握られていました。ただ、ミスも多く単調になる事が多いのでまとめて点をとられる事が多いように見うけられました。

3位:カナダのおばさん(JOSEE GRAND'MAITRE)選手

ほとんど、試合を見られませんでした。ただ、私の試合前に堂々とコートで一人打ちをガンガンやっていたのが印象的です。

3位:LAURA FENTON選手(USA)

親日家の彼女は、来日した時も怪我を押してのクリニックを行っていましたが、今大会も膝の状態が悪いようで、試合のつどアイシングをしていました。若い人達に混じって夜中まで遊んでいた姿が印象的です。プレースタイルはご存知の方も多いと思いますが、バックコートからセットアップをして点をとる昔のスタイルで、ジェニファー選手との試合では大声を出して怒りまくっていましたが、速い展開の前に一方的に押されていました。それでも追いこまれてからの集中力はさすがで、百戦錬磨だなぁと感じました。


ダブルス
男子

◆優勝:メキシコ

彼らのダブルスは「理」よりも「勢」です。サーブは2人とも9割型ゼットで、思いっきりしか打ちません。全てがフルショットでした。ラリーも同様です。カナダとの決勝を坂本選手は「バカ打ち対きっちり」と評していましたが、まさにその通りで、バックコートからの攻撃はピンチが中心。
フロントコートを2人で陣取り、前で打ち勝つ事に徹してしました。コンビネーションはまずまずで、左右入れ替わっても上手く機能していました。私にはとても真似できません。マッチポイントを取られても攻撃的なショット連発で、審判泣かせのギリギリのショットが続きました。全てキル狙いだったのでしょうか?そのメンタルがアメリカ、カナダを連破したのだと思います。

◆準優勝:カナダ

非常に完成されたペアで長く組んでいるのかな、と思いました。コンビもすばらしく、バックコートから状況に応じたショットを使い分けるMIKE CERESIA選手と、フロントコートを制し、チャンスボールをことごとく決めるMICHAEL GREEN選手はまさに名コンビでした。しかし、劣勢になったり、スキップが重なった時にズルズルと点をとられ、左右を入れ替えて機能しなかったり、戦略が後手でしかもうまくいかないというのがもったいなかったというか運がなかったようでした。

◆3位:アメリカ

何度も全米ダブルスを制しているRUBEN GONZALEZ選手とMIKE GUIDRY選手のペア。さぞかし、抜群のコンビネーションなんだろうかと思っていたら、コンビというよりはガツガツ打つという感じでパワープレーの印象でした。2人でボールを追いかけるシーンも何度も見ました。プレースタイルはやはりバックコートからのセットアップが主流で、ロールアウトで点を取ろうとしていました。個人能力の高さで勝ってきているようですが、前回、今回とメキシコの前にダブルスは勝てません。個人主義の限界を見ている気がします。それにしても50歳を過ぎたRUBEN選手の動きは20代のメキシコの選手と比べても、見劣りしません。とてつもないトレーニングを積んでいるんだと思います。

◆3位:ベネズエラ

本当はここに日本と書きたかったのですが、残念です。確かに彼らは強いです。野田選手曰く「大会No.1のコンビネーションかもしれない」そうです。非常にクールで、表情がなく、たんたんとプレーを進めていました。動きはそれほどに感じませんでしたが、フォアハンドのキルショットの確率が高く、リバースピンチも随所に混ぜてきます。日本チームが前後で組んでいるという事を考慮に入れていたかどうかはわかりませんが、力のあるストレートを中心に大崩しない確実なショットを連発してきました。しかし準決勝のカナダ戦ではレベルの違いをみせつけられ、試合後に悔しそうな表情を見せていました。


女子

優勝:アメリカ

とっても勝気な2人が組んでいました。プレーはやはりゆっくりした展開を得意にしていて、JACKIE RICE選手の個人能力とショットセレクションで勝っていると思いました。ちなみに相方KIM選手のボーイフレンドはカナダのKANE選手です。その辺でいちゃいちゃやってました。あー若い若い(オヤジ発言)

準優勝:カナダ

右サイドを担当したKARINA選手はダブルスのスペシャリストだと思いました。大きな上背にひょろっとした体型、アイドルみたいな顔してパワーはないんですが、低い打点からのライジングが非常に見事で、早い展開にも打ち負けません。カバーリングもすばらしく、本当に関心しました。左サイドのAMANDA選手は総合能力が高く、ピンチ、ストレートの打ち分けが見事です。クロスはあまり打たなかったような印象です。決勝ではアメリカに負けてしまいましたが、ダブルスの完成度は本当にすばらしかったです。

3位:メキシコ

団体戦ではアメリカ相手にタイブレークをしていました。ほとんど試合は見られませんでしたが、フロントコートは本当に強かったです。

3位:日本

我らが日本、前回の雪辱をはたし見事にベスト4入り。おめでとうございます。プレーは日本で見ているそのものでしたが、いつも通りのプレーをこの大舞台でできるという事が本当にすごいと思いました。私が細かい事を言うより、本人達に直接聞いてもらった方がその状況がよりリアルに伝わるのではないかと思います。何を考えていたのか?私も知りたいです。

各国選手のスタンス

各選手の性格というのは英語が話せない私にはなかなか理解しかねるのですが、USAチームは個人行動の人が多く、チームメイトの応援をしている人はほとんどいませんでした。そんな中でもJASON選手は自分の試合前に大声で自分のチームを応援していました。対してJACK選手は自分の試合時間にきっちりあわせて来場し、自分の試合に向けて調整をします。カナダチームはディナーも合同でとる事が多くて比較的、団体で行動していました。ケイン選手に限っては特別扱い?のようで、個人行動がメインでした。おそらく、前述の彼女さんと仲良くやっていたのでしょう。サンファンはリゾート地でもありましたから。ブライアン選手は本当に男女問わずチームメイトの応援をしていました(自分の試合後という事もあったと思いますが)。
ちなみに日本チームも全員とはいかなくても団体で行動する事が多かったように思います。試合に対する姿勢も、当然皆違って、清水選手や船谷選手はJACK選手型。小野選手や私はJASON選手型という感じでしょうか。こんな場をお借りして申し訳ないんですが、私の世界大会、緊張の初試合にわざわざ応援だけのために駆けつけてくれた、坂本選手、野田選手。どうもありがとうございました。


●団体戦
男子はカナダの優勝でしたが、アメリカとの決勝は大熱戦でした。
シングルスは普段のIRTランキング通りにアメリカのJACK選手とカナダのKANE選手がとり、ダブルスは序盤からサイドアウトの連続。点はなかなか入らず、シーソーゲーム。しかし、パワーと個人能力に頼るアメリカはコンビネーション抜群のカナダ相手に15点をとるという作業を2回続ける事は難しかったようです。タイブレークも点数は8点でしたが、終始カナダペアのリードで、最後にアメリカが少しだけ意地をみせたような感じでした。
女子の団体でアメリカがシングルス2本をとったので、団体総合はアメリカが優勝しましたが、カナダとの差はほとんどないです。カナダの女子選手は最後の勝負所で必ずと言ってよいほどスキップをしてしまいます。勝利のプレッシャーか、はたまた王者アメリカの名前がそうさせるのか不明ですが、私が見た範囲実力的にはほとんど互角です。アメリカの女子に関してはここ数年全くメンバーが変わらず、高齢化してきています。もちろん層の厚いアメリカ、下の年齢層も育っているようですが、ナショナルチームメンバーにはまだ及ばないようです。また、メキシコも今大会エースのALVARO選手が勝負所で勝利を奪えませんでしたが、アメリカプロツアーでの実績からすれば、優勝してもおかしくありません。彼が勝てば、得意のダブルスと併せて団体戦の優勝も十分に狙えます。
女子も若いプレーヤーが多く、しかもコーチングがしっかりしているようにみえるので2年後、上位を脅かす存在になるかもしれません。日本は女子が6位。実際3位との差は僅差で、男子よりも入賞の可能性が高いと言えます。しかしそれは現時点での話で、日本の上にいるチームはアメリカを除くと、ほとんどが20代前半の選手です(多分)。上位進出の道はそんなに甘くないはずです。最近は若くて練習熱心な選手が日本にも何人か出てきたように感じます。次回の韓国を目指して頑張って欲しいと思います。男子4位というのは5位ベネズエラ9位グアテマラと対戦している事を考えると順位のつけにくいトーナメントでも真の4位という事が言えると思います。
しかし、上位3チームの壁は厚くプロツアーで揉まれている連中と離れ小島の日本でチマチマ練習している我々との環境の差は歴然です。やはり現場で揉まれるのが、上達の一番の近道ですが、今の日本でできる事と言えば、コーチング理論の確立だと思います。これは離れ小島でもできる事です。じゃあ誰が?と言うと難しい問題ですけど…。
特にグリップは早期修正が必要だと思いました。私も1年半くらい前にあるプロ選手にグリップを変えるようにアドバイスを受けました。当時は「グリップなんてなんであろうと思ったところにボールを打てれば勝てる」と思っていました。しかし、私が今大会を見て、総合的に言える結論は「やはり国際試合で勝つには打ち負けない事」。昔からのグリップでプレーしているのは長くプレーしているアメリカの選手くらいで、最近のアメリカの選手やカナダ、メキシコの選手はほぼ100%新しいグリップです。ちなみに男子トッププロは全員そうです。
簡単に言うと、バックハンドの時にじゃんけんのグーを突き出すようなグリップで、日本では及川選手(プロケネ)や、清水(尚)選手(オークス)がとり入れています。特徴はフォロースルーが大きく、バックウォールにガシガシラケットがぶつかります。私も試みようとしたのですが、13歳の軟式テニスを始めた時からワンハンドグリップで通してきたので、握り替えという作業ができません(不器用なんで)。学生の頃のように毎日2時間以上、一人打ちができる環境があれば変えようとも思いますが、現在は体造りで時間がなくなってしまうので、ラケットすら握れない状況です。今後の若いプレーヤーには是非期待したいと思っています。


私は文字にするという作業があまり得意ではないので、なかなか伝わりにくい部分も多いと思います。この点に関しては大変申し訳なく思っています。一人でも多くの方に私の世界大会を通じた経験、理論、技術等を伝えたいと考えていますので、老若男女問わずいつでもどこでも声をかけてくださればと思います。
子供の夜泣きに絶えられる方なら、我が家で夜通しラケットボール談義も可です(笑)。